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福岡地方裁判所 昭和48年(わ)140号 判決

本籍

福岡県嘉穂郡築穂町大字桑曲二三三番の一

住居

同県飯塚市片島二丁目二〇番七二号

会社役員

多田勝利

明治四一年一月一五日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官富村和光出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役六月および罰金四〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金一万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、福岡県飯塚市片島二丁目二〇番七二号において多田組なる商号で土木工事請負業を営んでいたものであるが、

第一  昭和四四年分の実際の所得金額が七、八〇八、四六九円、これに対する所得税額が二、二二九、八〇〇円であるにもかかわらず、外注費を公表帳簿上架空に計上し、この代金を支払ったように経理して簿外預金を設定するなどの不正の手段により、その所得の一部を秘匿したうえ、昭和四五年三月一三日、同市新立岩一一番四五号所在の飯塚税務署において、同税務署長に対し、所得金額が三、八一五、九一二円、所得税額が四六二、二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により正当な所得税額との差額一、七六七、六〇〇円を免れ、

第二  昭和四五年分の実際の所得金額が四九、一九四、七二二円、これに対する所得税額が二六、五〇四、二〇〇円であるにもかかわらず、前同様の不正手段により、その所得の一部を秘匿したうえ、昭和四六年三月九日、前記飯塚税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一三、六八二、三六九円、所得税額が四、三三、〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により正当な所得税額とのの差額二一、五七一、二〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一、被告人の当公判廷における供述

一、被告人の検察官に対する供述調書二通および大蔵事務官に対する質問てん末書七通

一、被告人外一名作成の上申書一一通および確認書

一、多田清英の検察官に対する供述調書

一、多田清英(四通)、伊藤子、木下康子、松岡笑子(二通)、鯉川誠(二通)、安田務(三通)、瀬井和男(四通)、石川ハルコ(二通)、白水覚(二通)、矢野信也、宮本覚の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一、小原香(二通)、宮原宗雄、船津雅太郎、杉重次各作成の職務報告書

判示第一の事実につき

一、八尋太作成の脱税額計算書(ただし、昭和四四年分に関するもの)

一、押収してある昭和四四年分所得税確定申告書一綴(昭和四八年押第一二六号の一)

判示第二の事実につき

一、八尋太作成の脱税額計算書(ただし、昭和四五年分に関するもの)

一、押収してある昭和四五年分所得税確定申告書(写)一通(前同押号の三)

(法令の適用)

判示各所為につき所得税法第二三八条第一項、(懲役刑および罰金刑を併科)、刑法第四五条前段、第四七条本文、第一〇条、第四八条第一項、第二項(併合罪加重)、同法第一八条(労役場留置)、同法第二五条第一項(懲役刑の執行猶予)。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 岡田良雄)

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